Published: September 20, 2016
敬老の日の朝9時。予告で気になっていた作品『怒り』を観てきた。
もうこの作品は圧巻の一言。更に添えるとすると、重さ。
非常に重い。
いろいろな意味で重い。軽々しく語れない作品の重さが凄まじい。
え、ちょっと待って、怒りが、個人的にはシン・ゴジラ、君の名は。を超えたんだけど…え…。
— toshi kamei (@tolehico) 2016年9月19日
『シン・ゴジラ』、『君の名は。』と、名作を立て続けに見てきたこの夏。
久しぶりに邦画が豊作な一年だなぁと思った。
しかしこの勢いは終わらない。
この2作品は特撮・アニメと日本を代表するカテゴリであり、本当に素晴らしかった。
しかし、とはいっても2作品とも非現実的な世界の話だ。
一方、この『怒り』という作品は、超がつくほどの現実世界の話だ。
その超現実的世界における『怒り』という言葉の裏側にある複雑な感情のすべてが、2時間半、痛みを伴いながら降り注いだ。
あまりにも複雑な感情の余韻に、観終わると同時に思考停止した。
カテゴリもテーマも演出も何もかも違うので、もちろんどちらが優ってるなどと比べることに意味はないだろう。
しかし、観終わった後の余韻は、『君の名は。』と逆ベクトルで匹敵していたし、画力に至っては、生身の人間の一切妥協のない迫真の演技によって、『シン・ゴジラ』の迫力に匹敵するものがあった。
李監督による3つの交錯するストーリー展開と演出が秀逸だった。
そして、日本を代表する役者陣による、一切の妥協のない心に訴えてくる力強い演技が、とにかく圧巻。
坂本龍一さんの生み出す天才的な旋律も、作品によりいっそうの重みを加えていた。様々な要素が、最高なキャスティングによって、間違いなく最高な形で表現されているのだ。
ここまで繊細、かつ、ずしりと重い映画はまさに邦画ならではだなと思う。
李監督は、血肉の通ったキャラクターを求める監督で、本物で、むき出しの感情が見えるまで決してOKは出さないらしいが、僕らには見えない役者の殻を撮影を通して何枚も何枚も破ることのできる監督なんだろうな。
こんなに優秀な俳優陣がそれぞれ撮影中に何枚も殻を破ったら、そりゃ良い作品になるわ。
— toshi kamei (@tolehico) 2016年9月19日
『怒り』というタイトルで表された作品だが、単純に激昂するような怒りではなく、責めても責めきれないやり場のない怒りをテーマにしていると感じる。
怒りは普遍的なものではあるが、複雑な感情を伴えば伴うほど、他人とは共感はできない。
本人しか感じることのない滲み出てくる感情に変わる。
人は信用すれば裏切られるし、信用しなければそれは相手を裏切ることにもなる。
人を信じることと裏切ることは紙一重で、その時の感情で自分勝手に決めてしまうものなんだなと思う。
実際、信じるという言葉は、状態を表すのではなく、意思を伴うものだ。
観ていく中で僕も、あの人は犯人じゃない、この人は犯人かも。と、終始信じては裏切っての繰り返しだった。
だからこそ終盤のシーンになるにつれて、真実を知ってしまうことを恐れ、目を背けたくなる自分もいた。
人は人を簡単に信じ、人は人を簡単に裏切るもの。
人を信じることも裏切ることも、それだけ重く、困難なこと。
この作品の本質は、人を信じることはどれだけ重くどれだけ困難なことかを描いた作品だと思う。
この顔は広瀬すずの顔じゃなくて小宮山泉の顔や pic.twitter.com/yt6p9KngD6
— 広瀬すず ℋ (@hirosesuzu06190) 2016年9月18日
そしてちはやふるにつづいて、僕はまた広瀬すずにしてやられた。
この作品は、渡辺謙・妻夫木聡・松山ケンイチ・宮崎あおい・森山未來・綾野剛などなど、主役級の演技派俳優が勢揃いする大型作品。
俳優陣の、仕草、視線、話し方など、細部まで研ぎ澄まされた演技にはただただ圧巻の一言で、この作品のストーリーを楽しむためには、その些細な挙動にも目が離せない。
なので、これだけのベテランが集まる中、広瀬すずは大丈夫なの?と観る前は若干不安に感じていたが、少しも引けを取らず、見事に小宮山泉という少女を演じきっていた。
その姿に素直に感動したし、末恐ろしかった。
ただ、心が痛く、非常にやるせない気持ちも残る…。作品をみればわかると思うが…。色々つらい。こんな演技反則だ。。。
映画見てからこの文章見ると…あれ?おじさんの目から涙が…
— toshi kamei (@tolehico) 2016年9月19日
広瀬すず 「怒り」
⇒ https://t.co/1Rmj4pcTsx
↑ 本人の言葉にも深く考えさせられるものがあるが、本作を観た後にこれを読むと、泉の苦悩と広瀬すずの苦悩と2重の苦悩に非常に心が痛い。。やるせない。
シン・ゴジラも君の名は。も結局2回ずつ観てしまったが、この作品ももう一度結末を知った上で見返したい作品だ。
しかし、できればもう二度と観たくない。
そんな作品でもある。
観ればわかって頂けると思う。
それくらい、衝撃的だった。
祝日の朝一に観てきたが、この強烈な作品にはだいぶ心がやられた。
余韻を引きずる。
ボッチ鑑賞ではこの余韻を開放できないので、さらに辛くなる。
夜は夜で、全然受け止めきれない気がするので、昼間に見ることをおすすめしたい。
できれば深夜に観て、日の出と共に帰路に就きたい。
観終わった後、太陽にすがりたい。
ちなみに僕は原作を読んでいない。
結末を知らずに観れたのが良かったのかもしれない。
センセーショナル描写が数多くでてくるので、ネタバレを観る前に明日にでも観に行って来て欲しい。
これまた口コミで広がって、週末はどこの映画館も混みそうだ。
こんな素晴らしい作品に出会えたこと、そしてそれを劇場で肌で感じれたこと、とても嬉しい。
本当に、どえらいものを観た。必見です。
↑ポスターの写真撮影は篠山紀信氏
宮崎あおいさんは役作りのために7キロ太ったらしいし、妻夫木聡さんと綾野剛さんは同棲したし、森山未來は無人島生活をしたそう。
「怒り」は妻夫木聡と綾野剛の同棲生活ばかりが取りざたされるけど、森山未來も役作りのために無人島生活をしていたそうだし、渡辺謙も漁協に取材に行ったし、宮崎あおいも千葉のホテルに缶詰になったそうだ(これは撮影の都合だろうけど)。
— ヒノッチ (@hinocchi) 2016年9月17日
宮崎あおいちゃんが役作りで7キロ太るために、とにかくゴロゴロして寝る前にアイスやらご飯食べまくりました!って言ってたけどそれ私の普段の生活ゥ…………
— カワコニ🌛🌛 (@______arsans) 2016年9月15日
いやほんと広瀬すずさんもだけど、宮崎あおいさんの演技も凄まじかった。こんな演技もされるんだと‥。
「怒り」、監督が凄いのか俳優が凄いのか。役者が何故芝居でメシを食えているかをまざまざと思い知る。出演俳優達の総合芝居クオリティは今年イチの邦画では。中でもその秘めたる実力を遂に表した宮崎あおいの、研いでいたナイフ(比喩)を垣間見た瞬間の戦慄と鳥肌に合わせ技一本です。#映画怒り
— Nickelodeon (@1976Nickelodeon) 2016年9月17日
泉の同級生・辰哉役は、1200人が参加したオーディションを勝ち抜いた新人の佐久本宝くんが大抜擢されたよう。
彼も味のある素晴らしい演技をしていた。
・豪華キャストから華やかさをはぐ 映画「怒り」の真骨頂 ・映画『怒り』は“信じること”の困難を描くーー宮崎あおいの慟哭が意味するもの