Published: December 25, 2015
2015年11月14日、福岡市天神を中心に明星和楽2015が行われました。
明星和楽をご存知でいない方もいらっしゃると思うので簡単に説明させていただきますと、
2011年に福岡で生まれた、テクノロジーとクリエイティブの祭典です。
昨年は台湾でも開催され、今年はまた福岡天神を中心に大きく開催されることになりました。
SXSWのように街全体をジャックして開催するのが特徴的で、毎年少しずつ規模が大きくなってきています。
様々な人がテクノロジーやクリエイティブにまつわる企画をそれぞれ持ち込み、それが同時多発的にカオスに展開されていくイベントです。
今回Mistletoeとして私は、以下の2つのコンテンツを明星和楽内のメイン会場の一つであるIMSホールでやらせていただきました。
イベントの様子はTHE BRIDGEさんとVentureBeatさんが取り上げてくださいました。
Photo by Daichi Chohara
企画には、以下のスタートアップ6社と海外VC5社が参加してくださいました。
Alpaca, Inc. ▶
Deep-Learning技術を用いた世界初のトレーディングプラットフォーム
Nulab Inc. ▶
福岡発のグローバルプロダクト開発ベンチャー
SORACOM, INC. ▶
IoT向けのモバイルデータ通信プラットフォームを提供する
SYMAX, Inc. ▶
ステルスで開発中のヘルスケアハードウェアスタートアップ
H2L Inc. ▶
触感型ゲームコントローラUnlimitedHandを開発している東大発のテクノロジーベンチャー
Skydisc, inc. ▶
福岡のセンサリングスタートアップ
Visionnaire Ventures ▶
(Susan Choe氏 & Keith Nilsson氏)
RedMartやReserveに投資をしている、シリコンバレーを中心としたファンドサイズ$80MのVC
Pavilion Capital ▶
(Chee-Kong Choun氏 & Jovasky PANG氏)
シンガポールの政府系投資銀行テマセクの子会社ファンド、freeeに$6M投資実績あり
500 Startups ▶
(James Riney氏)
シードアクセラレーターとして世界的によく知られていて、最近日本ブランチファンドを立ち上げたグローバルなVC
Cherubic Ventures ▶
(Tina Cheng氏)
アジアを中心に投資をしていて、今後日本への投資を積極的に増やしていこうとしているSFのVC
Steve Jang氏 ▶
(Angel Investor)
元SoundTrackingのファウンダーで、BlueBottleCoffeeやUber、Coinbaseに投資をしているAngelInvestor
今回、明星和楽でコンテンツを提供させていただくことになったのは、明星和楽実行委員であり福岡発のベンチャーNulab社のCEOである橋本さんが、Mistletoeの孫泰蔵さんに話を持ちかけてくださったからです。
橋本さん率いるNulab社はCacooなど海外ユーザ比率の高いプロダクトを開発しておりますが、さらに世界展開を加速させたいということでした。
そこで、海外展開をしていく気概とポテンシャルのある日本のスタートアップと海外のVCやメディアを積極的にマッチングする場をもうけ、日本のスタートアップの海外展開を後押ししたい、そんな場を作っていこうということになり、企画がスタートしました。
ピッチやパネルディスカッションに加え、以下のようなクローズドな企画も、明星和楽の裏コンテンツとして行いました。
Photo by tolehico
海外のVC達に日本のリアルなスタートアップエコシステムの現状を理解していただくことは、日本のスタートアップがよりグローバルで成功していく上で必須です。
そこで、明星和楽前日に国内のスタートアップ関係者をお招きして、海外VCと共に交流会を開催しました。(場所:料亭 三光園)
土曜日の福岡市のホテルが壊滅的で大変取りづらいということもあり、都内からスタートアップ関係者をお招きすることはできなかったのですが、高島市長や福岡のローカルVCを中心に参加してくださり活発な議論で盛り上がりました。
Photo by Daichi Chohara
私たちが今回の企画で、スタートアップ・VC共に一番の提供価値として設計したのが、このクローズドミーティングです。
資金調達や提携先紹介など海外展開のきっかけとなるよう、6社のスタートアップと5社のVCがそれぞれ25分ずつクローズドの場でマッチングする時間です。
日本のスタートアップを知っていく上で選りすぐりのスタートアップ6社としっかりビジネスの話を出来る機会は大変貴重だと海外VCの方々は喜んでいただけました。
また、的確なアドバイスも沢山飛び、スタートアップにとっても次に繋がるとても価値のある時間となりました。
Photo by Daichi Chohara
企画の締めくくりとして福岡市にある友泉亭公園という由緒ある日本庭園を貸しきり、海外VCとスタートアップでお茶会をひらきました。
せっかく日本にいらっしゃったのだから日本文化も味わってもらい、単純にまた来たいと思っていただきたいと考え、海外VCをおもてなす企画も最後に加えたのです。
(さらにこの後、博多ラーメンともつ鍋も食べに行きました。笑)
普段は紅葉の時期は貸し切りはしないということでしたが、福岡市が応援する明星和楽の企画ということで、快く承諾していただきました。
風情のあるとても素敵な庭園なので、福岡にお越しの際はぜひ足を運んでみてください。
日本から海外で成功するスタートアップを増やしていくことは、日本のスタートアップエコシステムをより発展させていくうえで最重要課題だと認識しております。
ではどうやったら増やしていけるのか。
これは、スタートアップの『質』そしてそれを『世界に伝えていく力』が重要です。
質は、世界で勝つ上で最低限の前提条件であり、それはつまりGlobalで戦えるチーム・プロダクトである必要があります。
その上で、海外への発信力が必要不可欠です。いい物を作ってもそれがしっかりと伝わっていなければ存在してないのと同じです。
上の図にありますように、情報を伝える上で重要なターゲットはサービスの潜在顧客・VCやメディア(スタートアップ関係者)です。
サービスの潜在顧客への発信はスタートアップが各自行うものでありここでは割愛しますが、我々エコシステムサポーターが特に考えなければならないのは、海外のスタートアップ関係者への情報伝達です。
また、伝える方法としてはネットを利用して情報を伝達させる、または、実際に会うの2パターンになります。
前者に関しては、メディアやスタートアップが独自で発信をしています。
日本語で発信していても英語に翻訳されることはまずないので、英語で発信していくことが必須といえます。
日本のメディアにも英語での発信力が今後ますます問われていくでしょう。
後者に関して、一般的に実際に会う場合はスタートアップが自ら会いに行くというのが定石となっています。
世界的にイケてるVCやメディアはインバウンドで大量に情報を仕入れることが可能なので、あなた達が来なさい、ということになるわけです。
スタートアップが個別に海外にアプローチしていくのは至極まっとうです。
それに加え我々スタートアップエコシステムのサポーターとしては、日本のエコシステムが海外のエコシステムと積極的に交わっていき人やお金や情報がもっと流動的になる仕掛けが必要です。
シリコンバレーを中心としたトップティアのVCが軒並み東南アジアや中国、イスラエル等に投資額を増やしていく中、なぜ日本のエコシステムにはその資金が流れてこないのか。
今回、企画をつめるうえで何人かの海外のVCにヒアリングしてみたところ、日本のスタートアップが海外VCから後回しにされているロジックは以下の様なものでした。
物理的、言語的に遠くて情報が少ない。
→ 米国マーケットにまだまだ開拓の余地がある中、米国外を労力をかけてウォッチする場合、マーケットの成長が見込める中国・インド・東南アジアを優先する。
→日本はそこに比べるとマーケットの魅力は低く(マーケットが縮小している)、情報取得コストも高い。
→後回しになる
→結果、日本のスタートアップよくわからない
日本のマーケットのアップサイドが頼りないため、彼等には魅力的にうつっていないのです。
そして、もし技術的に優れたスタートアップがいるならお前たちが来い、となってしまうわけです。
確かに当然の結果です。
しかし、スタートアップがグローバルで勝てるプロダクトを作りそれを自ら出向いて発信するのはあくまでも前提なので、それだけでは全く面白くありません。
土壌も変えて業界全体で後押しする必要があります。
我々サポーターがすべきことは、日本のエコシステムのグローバル化です。
そのためにも、海外の資本を日本のエコシステムに入れていきたい。
例えば、海外のスタートアップ関係者が日本のスタートアップに注目すると、クロスボーダーM&Aも増加します。
ここ数年の主なクロスボーダーM&Aは、米Zynga社によるウノウ社買収、Google社による東大ベンチャーSCHAFT社買収、The Match GroupによるPairs運営のeureka社買収です。そこまで多くありません。
この件数を増やすことは、エコシステムのグローバル化の分かりやすいKPIと言えるでしょう。
我々は特に鎖国をしているつもり全くないと思います。
しかし、結果的に鎖国になり、極東にあるガラパゴスなエコシステムが出来上がってしまっているのです。
一方で、東南アジアを中心としたアジアのエコシステムは、欧米を中心とした海外のエコシステムと上手く結びついています。
彼らのマーケットには、アップサイドがあるため海外の資本はますます入ってきます。
それに加え、確かに彼等は英語で発信していますし、例えばスタートアップのイベント等も英語がメインです。
日本でもスタートアップ業界の基本言語が英語であるのが当たり前になっていくような変化が必要なのかもしれません。
Mistletoeも支援している、2015年春に行われたSLUSH ASIAは全編英語で行われ、海外からの参加者も多くいわゆる日本のスタートアップ界隈のイベントとは一線を画するものとなりました。
2016年のSLUSH ASIAもおそらくもうすぐ発表されると思いますが、目が離せません。
我々日本のスタートアップエコシステム関係者に求められているのは、積極的に英語で発信し続けること・海外のVCやメディアを無理矢理にでも招致し日本のマーケットに興味をもってもらうことなのではないかと思います。
互いのタイミングもありますので、資金調達は一回のMTGで決まるものでもありません。
しかしながら、今回のマッチングから資金調達が生まれたり、後から振り返った時にこの出会いがスタートアップの皆さんの海外展開を後押しするものになっていると、我々としては大変嬉しいです。
まだまだ仮説検証をしていく必要は大いにありますが、これからも海外のスタートアップエコシステムからヒトやお金をどんどんと日本のエコシステムに巻き込んでいけるよう、積極的に仕掛けていきたいと思います。